2025年8月30日は、アジア太平洋地域のサステナビリティ推進に大きな影響を与える政策変更や、産業界の実務者に直結する新たな支援ツールが発表された日となりました。特にシンガポール証券取引所(SGX)上場企業への気候関連情報開示義務の一部延期は、今後のESG報告体制や投資家対応にも波及効果が見込まれます。また、国際的な技術団体ASHRAEと国連環境計画(UNEP)が共同で公開した冷凍空調プラント向けサステナビリティ評価ツールは、現場レベルで持続可能性を高めるための具体的手段として注目されます。
昨日のサステナビリティ最新トピック
シンガポール:ISSB基準対応 気候報告義務化スケジュールを一部延期
シンガポール政府は2025年8月30日付で、「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」に準拠した気候関連情報開示について、中小規模上場企業への外部保証取得義務開始時期を2年間延長し2029年からとすることを発表しました。これは経済不透明感や中小企業側のデータ収集・分析体制整備遅れなど現実的課題への配慮によるものです。一方でScope 1および2排出量については予定通り2025年から開示が求められます。
この決定にはシンガポール経営者連盟(SBF)など産業界からも支持があり、「質の高い開示」を最終目標として段階的な制度運用へ舵を切った形です。ただし規制当局は「移行期間中も既存開示内容充実やISSB基準要素導入努力」を強く求めており、単なる先送りではなく“質重視”への転換点とも言えます。今後アジア全域で同様課題を抱える市場関係者にも大きな参考事例となるでしょう。
ASHRAE・UNEP:冷凍空調プラント向け サステナビリティ評価チェックリスト公開
同日、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)と国連環境計画オゾン行動チーム(UNEP OzonAction)は「Assessing RAC Plant Sustainability」チェックリストおよび指針資料群を無償公開しました。このツール群は世界各地の冷凍・空調設備管理者や技術者向けに設計されており、
- エネルギー効率
- 排出削減
- 新規冷媒導入時対応
- 運用保守プロセス最適化
など多岐にわたる観点から自己診断・改善策立案が可能です。複雑化する設備構成、新技術導入、人材育成面でも活用でき、「設計意図」と「運用成果」のギャップ解消につながります。グローバル展開している製造業や物流施設等では即時活用価値が高い内容と言えるでしょう。
まとめ
昨日投稿された記事・ニュースでは、
- 政策面ではシンガポールによる気候情報開示制度運用見直しという東南アジア最大級市場発信型インパクト、
- 実践面ではグローバル標準団体×国際機関協働による現場支援型ソリューション提供、
という二つの潮流が明確になりました。
特筆すべきポイントとして、
「ESG情報開示=形式遵守」から「質重視」「段階的成熟」へ
「トップダウン施策」と並行して、「ボトムアップ型現場改善支援」が加速
という両輪戦略こそ、多様性あるグローバル市場下で持続可能性推進力となっていることが浮かび上がります。
クライアント各社でも、自社状況に応じた柔軟かつ着実な取り組みロードマップ策定、および最新外部支援ツール活用検討をご提案いたします。
本コラム執筆担当:ESGコンサルタント

