2025年11月9日、サステナビリティ分野では複数の重要なニュースが報道されました。特に注目すべきは、カナダ政府が発表した野心的な気候競争力戦略です。同国は今後5年間で1兆ドルを超える投資を触発し、クリーンエネルギー産業での世界的リーダーシップを目指す計画を明らかにしました。一方、グローバルな企業レベルでも、大手企業による脱炭素化への取り組みが加速しており、サステナビリティ投資の新たな段階へ突入していることが伺えます。
昨日のサステナビリティ最新トピック
カナダ、気候競争力戦略で1兆ドル超の投資を計画
カナダ政府は11月9日、「予算2025:カナダ強化」の一環として、新たな気候競争力戦略を発表しました。この戦略は、グローバルな経済変動と急速な技術革新、そしてクリーンエネルギーへの転換という世界的な潮流に対応するために設計されています。
同戦略の中核は、今後5年間で1兆ドルを超える投資を触発し、原子力、水力、風力、エネルギー貯蔵、および電力網インフラへの投資を加速させることです。カナダは2035年までにクリーン技術市場が3倍に成長し、クリーン電力の需要が2倍になると予測しており、この機会を活かすべく戦略を立案しています。
戦略の3つの柱は以下の通りです。第一に、クリーン経済投資税額控除を通じた投資の促進です。15%のクリーン電力投資税額控除を実施し、州・準州政府の王立企業の適格性に課せられていた条件を撤廃します。また、30%のクリーン技術製造投資税額控除の対象となる重要鉱物の範囲を拡大します。第二に、温室効果ガス規制の明確化です。石油・ガス部門のメタン規制を強化し、埋立地のメタン規制も最終化します。メタンは二酸化炭素の80倍の温室効果を持つ最も有害なガスの一つであり、削減も容易です。第三に、クリーンエネルギーの未来を支える重要鉱物への投資です。予算2025では5年間で20億ドル以上の新規投資を約束し、生産加速、高給職の創出、戦略的グローバル市場での地位強化を目指しています。
この戦略により、カナダは低炭素経済のリーダーとしての地位を確立し、世界的なネットゼロ転換における競争力を強化することを目指しています。
グローバルなESG動向:企業の脱炭素化取り組みが多面的に展開
11月9日のESG Today週間レビューでは、世界中の企業による多様なサステナビリティ取り組みが報道されました。主な動きは以下の通りです。
航空業界のグリーンウォッシング是正**:20社以上の航空会社が、グリーンウォッシング調査後に環境主張を変更することを決定しました。これは企業の環境表示の信頼性向上に向けた重要な一歩です。
大規模な再生可能エネルギー投資:アポロが英国の大規模洋上風力発電所の50%の株式をØrstedから65億ドルで買収しました。また、Googleは200,000トンの再生林ベースの炭素除去契約をMombakと締結し、大規模な炭素除去プロジェクトを推進しています。
企業のネットゼロ転換計画:HSBCが新たなネットゼロ転換計画を発表し、具体的な目標を設定しました。Appleはイタリアでエネルギー企業Engieと15年間の再生可能エネルギー契約を締結しています。
サステナビリティ技術への投資:EU委員会は持続可能な輸送燃料セクターを促進するために30億ドル以上を投資し、ネットゼロ技術プロジェクトの加速に33億ドルを投資しています。
サステナビリティデータの統合:Position Greenがサプライチェーン持続可能性ソリューション提供企業Factlinesを買収し、サステナビリティデータの統合を推進しています。
まとめ
2025年11月9日のサステナビリティ分野は、政府レベルでの大規模な気候投資戦略と企業レベルでの多面的な脱炭素化取り組みが同時に進行する、極めて重要な転換点を示しています。
カナダの気候競争力戦略は、単なる環境対策ではなく、経済競争力の強化として気候変動対応を位置づけている点が特筆すべきです。2035年までにクリーン技術市場が3倍に成長するという予測の下、1兆ドルを超える投資を計画することで、カナダはクリーンエネルギー産業での世界的リーダーシップを目指しています。これは、気候変動対応が単なる規制対応ではなく、経済成長の機会であるという認識が、政府レベルで確立されていることを示唆しています。
一方、グローバルな企業レベルでは、航空業界のグリーンウォッシング是正、大規模な再生可能エネルギー投資、ネットゼロ転換計画の具体化など、より実質的で透明性の高いサステナビリティ取り組みが加速しています。特に、企業による環境主張の信頼性向上と、サステナビリティデータの統合推進は、サステナビリティ報告の質的向上を示唆しており、今後の企業評価基準の変化を予感させます。
これらの動きは、サステナビリティがもはや企業の社会的責任の範疇を超え、経済競争力の中核要素として認識されていることを明確に示しています。クライアント企業のサステナビリティ担当者にとって、この転換期において戦略的な投資判断と透明性の高い情報開示が、ますます重要になることが予想されます。

