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1兆ドル規模の適応資金「FINI」がCOP30で発表

2025年11月13日、COP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)が開催され、気候変動適応のための新たな国際的資金枠組み「FINI」が発表されました。この日は、健康・教育・金融・インフラなど多岐にわたる分野で、気候変動への適応とレジリエンス強化に向けた具体的な取り組みが相次いで発表され、特に「適応」が政策の中心に据えられた一日となりました。本コラムでは、COP30をはじめとする2025年11月13日に投稿された海外のサステナビリティ関連ニュースを厳選し、最新動向をご紹介します。

目次

昨日のサステナビリティ最新トピック

COP30で「Belém Health Action Plan」採択、健康分野の気候適応が国際的優先課題に

COP30の初日、ブラジル・ベレンで「健康と気候に関する閣僚会合」が開催され、「Belém Health Action Plan(ベレン健康行動計画)」が正式に採択されました。この計画は、ブラジル政府と世界保健機関(WHO)が主導し、気候変動による健康リスクへの対応を強化するための国際的ロードマップです。80カ国以上が支持を表明しており、各国が気候変動に適応したレジリエントな医療システムの構築を加速するための協力体制が整いました。

計画では、気候変動による熱波・感染症・食糧不安などへの対応策や、医療従事者の教育・訓練、国際的なデータ共有の推進などが盛り込まれています。ブラジルのアレクサンドレ・パディーリャ保健大臣は、「気候変動はもはや将来の脅威ではなく、すでに私たちの健康に影響を及ぼしている。政府と政策は、適応と対応に全力を挙げるべきだ」と述べました。

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FINI、2028年までに1兆ドルの適応プロジェクト資金を創出へ

COP30では、気候変動適応プロジェクトへの資金供給を加速する国際的イニシアティブ「Fostering Investible National Planning and Implementation (FINI) for Adaptation & Resilience」が発表されました。このイニシアティブは、アトランティック・カウンシル気候レジリエンスセンターとNRDC(自然資源防衛協議会)が主導し、各国の国家適応計画(NAP)を投資可能で資金調達可能なプロジェクトに変換することを目指しています。

FINIは2028年までに、適応プロジェクトのパイプラインに1兆ドル(約150兆円)を投入することを目標としており、そのうち20%は民間投資、5億ドルは多国間機関や慈善団体からの支援を想定しています。これにより、脆弱な国々が気候変動への適応とレジリエンス強化に向けた長期的で実行可能なソリューションを構築できるようになります。

ブラジルのマリーナ・シルバ環境・気候変動大臣は、「適応はもはや抽象的な政策目標ではなく、人々の命と経済を守るための不可欠な行動だ」と語りました。

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IDB・CAF・CDB、債務交換によるレジリエンス強化イニシアティブを発表

COP30では、中南米・カリブ地域の開発銀行であるIDB(中米開発銀行)、CAF(ラテンアメリカ開発銀行)、CDB(カリブ開発銀行)が、気候変動へのレジリエンス強化を目的とした「債務交換(Debt-for-Resilience)」共同イニシアティブを発表しました。この仕組みでは、途上国の債務を気候適応や災害対策のための資金に転換することで、財政的負担を軽減しつつ、レジリエンス強化を推進します。

このイニシアティブは、気候変動の影響を受けやすい国々の財政的持続可能性と気候適応能力の両立を目指しており、今後の国際的な気候金融の新たなモデルとして注目されています。

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早期警戒システムの国際的支援、2025年報告書で進捗を公表

COP30では、気候リスク・早期警戒システム(CREWS)が「2025年グローバル多災害早期警戒システム状況報告書」を公表しました。報告書によると、世界の60%以上の国が何らかの早期警戒システムを導入済みであり、気候変動による極端な気象災害への備えが進んでいることが示されました。

CREWSは「2030戦略」を発表し、気候脆弱国が早期警戒システムを構築・強化できるよう、ルクセンブルク(200万ユーロ)、モナコ(70万ユーロ)、ノルウェー(500万ドル)など複数国から支援を受けることを発表。また、ベルギー(830万ユーロ)、アイルランド(800万ユーロ)、スペイン(500万ユーロ)なども地表気象観測の強化に協力しています。

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香港、12億ドル規模のデジタルグリーンボンド発行

2025年11月13日、香港特別行政区は12億ドル(約1800億円)規模のデジタルグリーンボンドを発行しました。このボンドは、ブロックチェーン技術を活用したデジタル証券として発行され、環境プロジェクトへの資金供給を効率化・透明化する狙いがあります。発行資金は再生可能エネルギー、省エネ、持続可能な都市開発などに充当される予定です。

デジタルグリーンボンドは、ESG投資の透明性と効率性を高める新たな金融商品として、今後のグローバル市場での普及が期待されています。

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シンガポール、カーボンクレジット取引の国際的プロトコルを発表

同日、シンガポールは「Article 6.2 Protocol」を発表し、国際的なカーボンクレジット取引の標準化を推進すると発表しました。このプロトコルは、Gold StandardとVerraが認証するカーボンクレジットの取引ルールを明確化し、国際的なカーボン市場の信頼性と流動性を高めることが目的です。

シンガポールは、アジアのカーボン取引ハブとしての地位を強化するため、今後も国際的なルール作りに積極的に関与していく方針です。

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GA Telesis、航空業界のサステナビリティをリードするEcoVadis評価を獲得

航空機部品のサプライチェーン企業GA Telesisは、2025年EcoVadisサステナビリティ評価で高い評価を獲得しました。EcoVadisは、企業の環境・社会・倫理・サプライチェーン管理を評価する国際的基準であり、GA Telesisは航空業界のアフターマーケット分野で最高水準の評価を受けました。

同社は、部品のリユース・リサイクル、CO2排出削減、サプライチェーンの透明性向上など、航空業界のグリーン化に貢献しています。今後、GA Telesisは業界全体のサステナビリティ基準を引き上げるリーダーとしての役割を果たすことが期待されています。

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米国MSU Denver大学、スポーツ分野のサステナビリティ推進

米国MSU Denver大学の学生たちは、スポーツ施設におけるサステナビリティ推進に取り組んでいます。NFLスタジアムから地域のジムまで、スポーツ施設のエネルギー効率化、廃棄物削減、持続可能な運営モデルの開発に注力しています。学生たちは、スポーツが社会に与える影響力を利用して、一般市民への環境意識啓発も行っています。

この取り組みは、スポーツ業界のESG化を牽引する事例として注目されています。

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まとめ

2025年11月13日は、COP30をはじめ、気候変動適応・レジリエンス強化に向けた国際的な動きが目立った一日でした。特に「FINI」イニシアティブの発表は、気候変動への適応が「政策」から「実行」へと移行した象徴的な出来事です。健康・教育・金融・インフラなど、多様な分野で具体的な取り組みが相次ぎ、気候変動への適応が「人間の命と経済を守るための不可欠な行動」として認識されつつあります。

また、香港のデジタルグリーンボンド発行やシンガポールのカーボンクレジット取引プロトコルなど、金融・市場の側面でもサステナビリティの新たな仕組みが登場しています。航空業界やスポーツ業界など、従来のサステナビリティの注目分野以外でも、具体的な取り組みが進んでおり、サステナビリティの「多様化・実践化」が進んでいることがわかります。

今後も、政策・金融・産業・教育など、あらゆる分野で気候変動への適応とレジリエンス強化が加速することが予想されます。企業のサステナビリティ担当者の方々は、これらの国際的動向を踏まえ、自社の戦略・施策を見直す機会とされることをお勧めします。

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