2025年11月28日、世界中でサステナビリティに関する重要なニュースが相次いで発表されました。アイルランドの気候変動対策への投資発表、企業による循環経済モデルの実装、そしてブラジルで開催されたCOP30の閉幕など、サステナビリティの実装が新たな段階へ進んでいることが明らかになりました。本日は、昨日投稿された主要なニュースリリースと記事から、企業のサステナビリティ担当者が押さえておくべき動向をお届けします。
昨日のサステナビリティ最新トピック
アイルランド、気候変動対策に€15.2百万を投資—国連開発計画事務所をダブリンに設置
アイルランドの気候変動・エネルギー・環境大臣ダラ・オブライエン氏は、ブラジルのベレンで開催されたCOP30に出席中、気候変動対策に€15.2百万の資金を投入することを発表しました。このうち€10百万は2026年の適応基金への拠出で、発展途上国の気候変動への適応力強化を支援します。
さらに注目すべきは、国連開発計画(UNDP)の新しいプロジェクトオフィスをダブリンに設置することです。このオフィスは、公正で包括的かつグローバルなグリーン・トランジションを推進するための持続可能な金融の推進に専念します。これにより、アイルランドは気候変動対策における国際的なハブとしての地位を強化しています。
アイルランド、運輸セクターに€24.3十億を投資—5年間で包括的なインフラ整備を実施
アイルランド政府は、最近の国家開発計画(NDP)見直しの下で、運輸セクター向けの部門別投資計画に内閣承認を与えました。この計画は、今後5年間で€22.3十億を公共交通、アクティブ・トラベル、道路、海運、航空など多様な運輸オプションに配分します。
さらに、インフラ・気候・自然基金から€2十億の追加配分がメトロリンク開発に充てられ、2026年から2030年の運輸部門への総NDP歳出投資は€24.3十億に達します。この大規模投資は、アイルランドの水・エネルギー・運輸インフラの包括的な近代化を支援するもので、グリーン・トランジションの実現に向けた具体的な行動を示しています。
富士通、NSKの軸受製品のライフサイクル全体での環境価値創造をサポートするプラットフォームを構築
富士通は、NSK株式会社向けに、軸受製品のライフサイクル全体を通じて環境価値を創造するビジネスモデルをサポートするプラットフォームを構築したことを発表しました。このプラットフォームは、軸受製品の再生・再利用の促進を通じて、NSKの持続可能な社会への貢献という企業哲学を支援します。
特に注目すべきは、ブロックチェーン技術の活用です。富士通は、新しい軸受への交換と比較して、軸受の再生による資源節約から得られる環境価値(GHG削減量)を計算・記録します。ブロックチェーン技術により、検査・保守記録とGHG削減データを改ざん不可能な方式で管理することで、軸受の再利用に対する信頼性を高めます。
このシステムは、製造から保守運用まで、軸受製品ライフサイクル全体のデータを統合・管理し、富士通の供給チェーン内の追跡可能性確保とGHG排出データ収集・管理の専門知識を活用しています。循環経済の推進と新たなビジネス機会の創出を通じて、個別企業や業界を超えた価値共創を実現する取り組みとして、サステナビリティ実装の先進事例となっています。
三菱重工業、2025年統合報告書と持続可能性データブックを発表—循環経済への取り組みを拡大[4]
三菱重工業(MHI)は、統合報告書「MHI REPORT 2025」と年次報告書「SUSTAINABILITY DATABOOK 2025」を発表しました。これらの報告書は、MHIグループの財務情報と非財務情報のバランスの取れた開示を提供しています。
2025年版のデータブックは、循環経済に関連した企業イニシアティブのカバレッジを拡大しており、広島県三原市の三原機械工場内で育成された「和田沖の森」が環境省から「国家認定持続可能管理自然サイト」として認証されたことが記載されています。さらに、従業員の健康とウェルビーイングを促進するための「ウェルビーイングと健康経営戦略マップ」も開発されました。
これらの報告書は、サステナビリティ経営戦略における進捗状況を公開するもので、サステナビリティ経営、環境、社会、ガバナンスの各領域における詳細なパフォーマンスデータを含んでいます。
COP30閉幕—化石燃料段階的廃止の統一的ロードマップ合意に至らず、ただし複数の前向きな成果を達成[1]
ブラジルのベレンで開催されたCOP30は、化石燃料の段階的廃止に関する統一的なロードマップ合意に至らないまま閉幕しました。ただし、2週間にわたる世界的気候サミットでは、複数の前向きな成果が達成されています。
特に注目すべき合意事項としては、「非公式ロードマップ」の発表、クリーンエネルギーへの投資成長の維持、グローバル実装アクセラレーターの立ち上げ、ジェンダー・アクション・プランの発表、改善されたジャスト・トランジション・メカニズムが挙げられます。
前アイルランド大統領メアリー・ロビンソン氏は、COP30を「COPプロセスを保護するための合意」と評価し、クリーンエネルギーへの投資成長、グローバル実装アクセラレーターの立ち上げ、ジェンダー・アクション・プラン、改善されたジャスト・トランジション・メカニズムに特に敬意を表しました。COP31は来年トルコで開催される予定です。
EU、2026年予算を採択—エネルギー・運輸インフラに€372.7百万以上を配分[1]
欧州議会(MEP)は、2026年EU予算を採択し、€372.7百万以上をエネルギー・運輸インフラ、人道支援、市民保護などの重要優先事項に配分することを決定しました。予算の焦点は、競争力、研究、安全保障、国境を越えたインフラ支援、国境管理、気候変動対策、外交政策への支援にあります。
特に、Horizon Europe(欧州研究開発プログラム)への資金が€20百万増加し、運輸・エネルギーネットワークへの資金が€23.5百万増加することが決定されました。これらの投資は、欧州のグリーン・トランジション推進における重要な財政的支援を示しています。
EU森林破壊規制法の実装期限を延長—大規模事業者は2026年12月30日、中小企業は2027年6月30日まで[1]
欧州議会は、2023年に採択されたEU森林破壊規制法を簡素化し、実装期限を延長することを決議しました。大規模事業者および取引業者は2026年12月30日まで、マイクロ・中小企業は2027年6月30日までに新規則への準拠が求められます。
追加的な時間は、「スムーズな移行を保証し、事業者・取引業者およびその代理人が電子的デューディリジェンス声明を作成するために使用するITシステムの強化措置の実装を可能にする」ことを目的としています。
しかし、ネスレ、フェレロ、トニーズ・チョコロニーなどの企業は、この延長に対して批判を表明しており、気候変動の影響の加速と欧州の規制的コミットメントに対する信頼の損失を理由に挙げています。
まとめ
2025年11月28日のサステナビリティ関連ニュースから浮かび上がるのは、循環経済とデータ活用の加速、そして政策・投資による具体的なグリーン・トランジション推進という2つの大きなトレンドです。
政策面での動きでは、アイルランドが気候変動対策に€15.2百万を投資し、国連開発計画事務所をダブリンに設置することで、国際的な持続可能な金融ハブとしての地位を確立しようとしています。また、運輸セクターへの€24.3十億の投資は、インフラ整備を通じたグリーン・トランジションの実現を示しています。EU予算の採択やCOP30の成果も、国際的な気候変動対策への政治的コミットメントを示しています。
企業実装面での動きでは、富士通とNSKの事例が特に注目に値します。ブロックチェーン技術を活用した軸受製品のライフサイクル管理は、循環経済の実現において、データの信頼性と追跡可能性がいかに重要であるかを示しています。三菱重工業の統合報告書も、循環経済への取り組み拡大を明示しており、大手製造業企業がサステナビリティを経営戦略の中核に位置付けていることが明らかです。
一方、EU森林破壊規制法の実装期限延長については、規制の実効性に対する懸念も生じています。企業のサステナビリティ担当者にとっては、規制動向の変化に対応しながら、自社のサステナビリティ戦略を着実に推進することの重要性が改めて認識される状況となっています。
昨日のニュースは、サステナビリティが単なるコンプライアンス対応ではなく、ビジネス機会の創出と企業価値向上の源泉として認識されつつあることを示唆しています。

