2025年12月2日、複数の企業がサステナビリティに関する重要な成果を発表しました。大手企業による包括的な持続可能性報告書の公開から、業界固有の認証制度の取得まで、企業のESG戦略がより具体的で測定可能な形で進化していることが明らかになりました。特に注目すべきは、単一企業の取り組みにとどまらず、サプライチェーン全体を巻き込んだ協働的なアプローチが広がっていることです。
昨日のサステナビリティ最新トピック
カナダ国鉄(CN)、10年連続の包括的サステナビリティ報告書を発表[1]
カナダ国鉄(CN)は、2024年度の「Delivering Responsibly Sustainability Report」を発表しました。これは同社の10年連続となる包括的なサステナビリティ開示です。
環境面での成果として、Scope 1および2のGHG排出原単位を前年比4%改善し、機関車燃料に占める再生可能燃料の割合を約10%まで高めました。同社は2030年および2050年の科学的根拠に基づく目標に向けた進捗を維持しています。
安全面では、過去2番目に良い傷害パフォーマンスを記録し、列車事故の頻度を前年比約8%改善しました。また、最前線の監督者向けに行動ベースの安全研修を強化し、職場安全リスクの特定と管理を推進しています。
人材面では、100万時間以上の研修を実施し、カナダ全域の30以上の施設でアクセシビリティ向上を進め、従業員向けのウェルネスプログラムを強化しました。
コミュニティ貢献として、約2,000万ドルをコミュニティイニシアティブに寄付し、56,000件以上の公開線路問い合わせに対応し、調達・サプライマネジメントチームの97%に持続可能な調達に関する研修を実施しました。
ガバナンスでは、S&P/TSX Composite Indexの215社中で第1位にランクされ、誠実性と透明性への取り組みを強化しています。
特筆すべきは、CNが「EcoConnexions Partnership Program」を通じて30社以上の顧客、サプライヤー、サプライチェーンパートナーを認識し、気候行動、環境影響の削減、責任ある事業慣行の推進を支援していることです。ゴールド、シルバー、ブロンズの3段階のパートナーシップレベルで、大手企業から中堅企業まで幅広い組織が参加しており、バリューチェーン全体での協働的なサステナビリティ推進が実現しています。
TPC Group、ISCC Plus認証による初の持続可能性取引を完了[2]
化学企業のTPC Groupは、国際的に認識されたISCC(International Sustainability and Carbon Certification)システムの認証を取得し、ヒューストン事業所から発生した1,3ブタジエンの初の認証取引を完了しました。
ISCC認証は、サプライチェーン全体における持続可能な原材料の持続可能性、トレーサビリティ、完全性を保証する世界的に認識された認証システムです。TPC Groupの認証取得は、同社がISCC原則に適合していることを実証し、持続可能な事業運営への取り組みと循環経済における同社の役割強化を示しています。
同社は、顧客の関心の高まりと追加のサプライヤー・顧客の認証取得に伴い、ポートネッシュおよびレイクチャールズターミナルおよび他の製品ラインへの認証拡大を計画しています。
GA Telesis、航空機リサイクル業界の国際基準監査で満点を達成[3]
航空宇宙ソリューション企業のGA Telesis, LLCは、Aircraft Fleet Recycling Association(AFRA)監査を完璧に完了し、指摘事項ゼロという成果を達成しました。同社は2025年EcoVadis Bronze Medalおよび2025 ISTAT Sustainability Awardの受賞企業です。
GA Telesis は、航空機の分解運用のあらゆる段階にESG原則を統合しており、AFRA Best Management Practice(BMP)基準への適合を通じて、廃棄物削減、炭素排出削減、従業員安全と開発の優先化、透明性と説明責任を備えた最高水準のグローバルサステナビリティ基準の維持を実現しています。
この成果は、循環型航空経済における同社のリーダーシップを強化し、航空機材料が責任を持って再利用され、グローバルな航空会社に対して持続的な環境的・経済的価値を生み出すことを保証しています。
New Holland、バイオメタン駆動トラクターで国家サステナビリティ賞を受賞[4]
CNHブランドのNew Hollandは、ブラジルESG協会が主催するESG Awardで「ESGにおける技術革新」部門を受賞しました。受賞対象は、世界初の有機廃棄物の分解から生成されるガスを燃料とするバイオメタン駆動農業用トラクター「T6.180 Methane Power」です。
2022年に商用製品として発売されたT6.180 Methane Powerは、ブラジルの生産者向けに利用可能です。バイオメタン推進技術は、標準的なディーゼルエンジンと比較して、規制対象汚染物質排出量を最大80%、CO2排出量を84%削減するなど、多くの環境上の利点を提供します。バイオメタン使用により、従来燃料と比較して25~40%の運用コスト削減が可能です。同トラクターは、同サイズのディーゼルトラクターと同等の性能と航続距離を備えています。
2023年には、New Hollandは主要なバイオメタン企業と協力して「エネルギー自給農場」のコンセプトを提示しました。バイオダイジェスター、バイオガス精製システム、発電機、トラクター、大型トラックで構成されるこのエコシステムは、ブラジルで先駆的であり、同国のバイオガス市場に革命をもたらしています。
このソリューションにより、生産者は農場内で生成されたバイオガス(例えば、動物廃棄物から)を機器に供給し、農場の「好循環」を活用することが可能になります。農場はエネルギーと環境の観点からますます自給自足になり、運用コストの削減と活動管理の安心感が向上し、燃料生産・使用の自給自足を実現し、化石燃料市場の不確実性から解放されます。
まとめ
2025年12月2日のサステナビリティ関連の発表から、以下の3つの重要なトレンドが浮かび上がります。
第一に、サステナビリティ報告の成熟化と多次元的評価です。CNの10年連続報告書は、環境、安全、人材、コミュニティ、ガバナンスという5つの領域にわたる包括的な開示を示しており、単なる環境対応から企業経営全体への統合が進んでいることを示しています。
第二に、サプライチェーン全体での認証制度の活用拡大です。TPC GroupのISCC認証取得やGA TelisisのAFRA監査完了は、業界固有の国際基準への適合が、企業の信頼性と市場競争力を高める重要な要素となっていることを示しています。これらの認証は、単なるコンプライアンスではなく、循環経済への参加と顧客信頼の獲得を実現する戦略的ツールとして機能しています。
第三に、技術革新による実質的な環境改善の実現です。New Hollandのバイオメタン駆動トラクターは、CO2排出量84%削減と25~40%のコスト削減を同時に実現し、環境対応と経済性の両立が可能であることを実証しています。さらに、エネルギー自給農場のコンセプトは、個別企業の取り組みから地域全体のエコシステム構築へと進化していることを示唆しています。
これらの動向は、サステナビリティがもはや企業の社会的責任の枠を超え、経営戦略の中核、競争優位性の源泉、そしてバリューチェーン全体での協働的価値創造の基盤となっていることを明確に示しています。企業のサステナビリティ担当者にとって、単なる報告書作成にとどまらず、業界基準への適合、技術革新への投資、そしてステークホルダーとの協働的なエコシステム構築が、今後の重要な課題となるでしょう。

