2025年12月6日、サステナビリティ分野では、AIと環境の関係に関する新たな学術的見解が注目を集めました。長らく「AIは膨大な電力消費を伴い、気候変動を悪化させる」との懸念が広がる中、カナダ・ウォータールー大学と米ジョージア工科大学の研究チームが、AIの世界的な温室効果ガス排出への影響は「予想ほど大きくない」とする分析結果を公表。AIのエネルギー消費が地域的には大きな負荷となるものの、国家・世界規模では相対的に小さいことを示し、AIを「環境問題の解決策」として活用する可能性を強調しています。本日のコラムでは、この注目論文を軸に、昨日のサステナビリティ最新動向をご紹介します。
昨日のサステナビリティ最新トピック
AIの気候影響は「意外に小さい」、大学の新研究が示唆
カナダのウォータールー大学と米ジョージア工科大学の研究チームは、2025年12月6日に発表された研究で、「AIの世界的な温室効果ガス排出への影響は、広く信じられているほど大きくない」との見解を示しました。
研究チームは、米国の経済データと、各産業におけるAIツールの利用頻度の推定値を分析。AIの導入が今後も現在のペースで進んだ場合に、環境にどのような影響を与えるかを評価しています。
分析の結果、米国におけるAIの総エネルギー消費量は、アイスランド1カ国の電力消費量と同程度であることが判明。しかし、米国の経済活動の83%が石油・石炭・天然ガスに依存している現状を踏まえると、AIによるエネルギー消費は国家・世界規模では「無視できるほど小さい」と結論づけています。
一方で、研究チームは「エネルギー消費の増加は均等ではなく、データセンターの立地地域で特に顕著に現れる」と指摘。ある地域では電力出力と排出量が2倍になる可能性もあり、地域レベルでは大きな課題となると警告しています。
研究の主著者であるウォータールー大学のフアン・モレノ=クルス教授は、「AIが気候問題の大きな原因だと考えて避けようとするのではなく、むしろAIを活用してグリーン技術の開発や既存技術の改善に役立てることが可能だ」と強調。今後は同様の分析を他の国にも適用し、地域ごとのAI導入が環境に与える影響を明らかにしていくとしています。
この研究は、AIとサステナビリティの関係に関する議論に新たな視点を提供するもので、今後の政策立案や企業のAI戦略に影響を与える可能性があります。
まとめ
2025年12月6日、サステナビリティ分野の目玉は、AIの環境影響に関する新たな学術的見解でした。
長らく「AIはデータセンターの電力消費を増やし、気候変動を加速する」との懸念が広がる中、ウォータールー大学とジョージア工科大学の研究チームが、AIの世界的な温室効果ガス排出への影響は「予想ほど大きくない」とする分析結果を公表しました。米国全体の経済活動に占めるAIのエネルギー消費は、アイスランド1カ国の電力消費に匹敵するものの、国家・世界規模では相対的に小さいと評価しています。
ただし、研究チームは「地域的には大きな負荷となる可能性がある」とも指摘。データセンターが集中する地域では、電力出力と排出量が2倍になるなど、地域社会への影響は無視できないと警告しています。これは、AIの導入にあたって、立地選定や地域との対話、再生可能エネルギーの活用など、地域レベルのサステナビリティ配慮の重要性を改めて浮き彫りにするものです。
一方で、研究チームは「AIを環境問題の解決策として活用する可能性」を強調。AIを用いてグリーン技術を開発したり、既存技術を改善したりすることで、環境と経済の両面で前進できると提言しています。これは、AIのエネルギー消費を「コスト」として捉えるだけでなく、「投資」として捉え直す視点の転換を促すものです。
本日の動向から、企業のサステナビリティ担当者に向けた示唆は以下の通りです。
1. AIの環境影響を「グローバル」と「ローカル」の両軸で評価する
AIの導入にあたっては、世界的な排出量だけでなく、データセンターの立地地域における電力需要・排出量の変化を詳細に把握し、地域社会との関係構築を進めることが重要です。
2. AIを「環境負荷」から「環境解決策」へと位置づけ直す
AIのエネルギー消費を最小化する取り組み(例:効率的なモデル設計、再生可能エネルギーの調達)に加え、AIを活用してエネルギー効率の改善、サプライチェーンの脱炭素化、循環型ビジネスモデルの設計など、環境課題の解決に貢献する使い方を検討すべきです。
3. 地域レベルのエネルギー・環境政策との連携を強化する
データセンターの立地や拡張にあたっては、地域の電力インフラ、再生可能エネルギーの導入状況、環境規制などと連携し、地域の持続可能性に配慮した運営を心がける必要があります。
今後、AIの導入がさらに進む中で、企業は「AIの環境影響をどう管理し、どう活用するか」を、サステナビリティ戦略の重要な柱として位置づけていくことが求められます。

