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金融庁の新たな流れで問われる人的資本の説明力—企業戦略とつなぐ開示ストーリーの作り方

人的資本開示は、単に指標を並べる段階から、企業戦略と結びつけて「なぜその指標を重視するのか」「どうすれば改善できるのか」を説明する段階へと移りつつあります。今回のセミナーでは、HRバディ研究所代表理事で慶應義塾大学大学院教員の佐藤氏が、金融庁の動向や先行企業の事例、統計分析を活用した組織課題の捉え方を解説しました。さらに、estomaの伊藤氏とのパネルディスカッションでは、サステナビリティ推進室と人事部の連携、データ管理、社内浸透の壁といった現場課題も掘り下げられました。本記事では、その内容を整理し、実務担当者が自社で活かせる形で再構成します。

目次

人的資本開示は、いま「開示そのもの」から「説明責任の質」へ

セミナーの概要——理論と実務をつなぐ人的資本経営の議論

本セミナーのテーマは、「人的資本経営における、理論に基づいた開示の方向性と活用事例」です。講師を務めたのは、一般社団法人HRバディ研究所の代表理事であり、慶應義塾大学大学院で教員も務める佐藤氏です。
佐藤氏は、戦略コンサルティングやデータサイエンス、人事戦略の実務を経て、現在は研究者としての知見を活かしながら、企業とともに組織分析や人的資本経営の支援に取り組んでいます。セミナーでは、学術理論と統計分析を活用して、人的資本開示をどのように企業価値向上につなげるかが語られました。
加えて後半では、estomaの伊藤氏を交えたパネルディスカッションが行われ、理論だけでは割り切れない現場の課題、特にサステナビリティ推進部門と人事部門の連携の難しさが共有されました。


なぜ今、人的資本開示で「ストーリー」が重要なのか

指標を出すだけでは、投資家にも社内にも伝わらない時代に

セミナーで繰り返し強調されたのは、人的資本開示において「ストーリー」が重要になっている、という点です。
これまでの人的資本開示は、政府や各種ガイドラインで示された項目に沿って、一定の指標を開示すればよいという見方が強くありました。たとえば、エンゲージメントや離職率、女性管理職比率などの数値を示すこと自体が目的化しやすかった側面があります。
しかし、現在はその段階を超えています。単に数値を開示するだけではなく、
・なぜその指標を重要視しているのか
・その指標が企業戦略とどうつながるのか
・その数値をどう改善していくのか
まで説明することが求められるようになってきました。
つまり、人的資本開示は「データの提出」ではなく、「経営の考え方を伝える行為」へと変わりつつあるのです。


金融庁のパブリックコメントが示す方向性

人材戦略を企業戦略と関連づけて説明する流れが強まる

セミナーで大きな論点となったのが、金融庁によるパブリックコメントです。そこでは、有価証券報告書において、企業戦略と関連づけた人材戦略、さらにそれを踏まえた従業員給与などの決定方針の開示が求められる方向性が示されました。
この動きが意味するのは明確です。人的資本に関する情報を、独立した人事トピックとしてではなく、企業戦略の一部として説明しなければならない、ということです。
実務上、これは大きな変化です。なぜなら、従来は「人事指標を開示しているから対応済み」と考えられた企業でも、今後は「その指標をなぜ採用し、どう企業価値につなげるのか」という説明まで必要になるからです。
この流れを踏まえると、人的資本開示は次の2つをセットで考える必要があります。
なぜその指標を開示するのか
どうすればその目標を達成できるのか
この2つがつながって初めて、投資家や社内に対して納得感のある開示になります。


企業戦略と人的資本KPIをどう結びつけるか

「理想の組織像」と「足元の現状」の差を説明できるかが鍵

佐藤氏は、人的資本のストーリー設計を考えるうえで、まず「To-Be(理想の組織像)」と「As-Is(現状)」を見比べることの重要性を示しました。
たとえば、理想としては、
・エンゲージメントスコア90以上
・退職率を一定水準以下に抑える
・女性管理職比率30%以上
・年間採用人数の目標達成
といった目標を掲げる企業は多いでしょう。
一方で、現状は、
・エンゲージメント78
・離職率が想定以上
・女性管理職比率10%台
・採用人数が不足
ということも珍しくありません。重要なのは、ここで単に「目標と現状に差があります」と示すことではありません。実務で問われるのは、次の2点です。

1. なぜ、その指標を開示するのか

そのKPIが自社の経営戦略において重要である理由を説明することです。たとえば、事業拡大のために採用力が重要なのか、品質維持のために定着率が重要なのか、イノベーション創出のためにエンゲージメントが重要なのかを明示する必要があります。

2. どうすれば、目標を達成できるのか

そのKPIに影響を与える要因を分析し、打ち手につなげることです。つまり、人的資本開示は、目標の宣言ではなく、改善の設計図であるべきだということです。


デンソー、NTTグループの事例から見える実務ポイント

デンソーに見る「企業戦略→人事戦略→開示」の基本形

セミナーでは、デンソーの事例が、人的資本開示の基本的なストーリー構築例として紹介されました。
ポイントは、エンゲージメント向上や人材ポートフォリオといった人事テーマが、前段の企業戦略に接続されていることです。つまり、「この会社は何を実現したいのか」があり、そのために「どの人的資本テーマを優先するのか」が定まり、その結果として「何を開示するのか」が決まっている構造です。
この流れは、多くの企業にとって参考になります。人的資本開示に悩む企業ほど、いきなり指標の選定に入るのではなく、「自社の戦略上、何を実現したいのか」から逆算するほうが、ぶれにくくなります。

NTTグループに見る「エンゲージメントと業績」のつなぎ方

より踏み込んだ事例として紹介されたのが、NTTグループの事例です。ここで特徴的なのは、従業員エンゲージメントを開示する理由として、「営業利益率との相関」が示されている点です。
これは実務上、非常に重要な示唆があります。人的資本指標は、単なる良いことではなく、業績と結びつく経営上重要なものとして説明されているからです。
つまり、ストーリーは次のようになります。
・エンゲージメントが高いほど、営業利益率と相関がある
・だからエンゲージメントを重要KPIとして開示する
・その向上は、将来的な業績向上につながる
こうした構造があると、投資家への説明だけでなく、社内での優先順位づけもしやすくなります。

プレゼンティーズムを起点にした三段論法

NTTグループの例でもう一つ注目されたのが、健康経営との接続です。そこで登場したのが「プレゼンティーズム」という概念です。
プレゼンティーズムとは、出勤はしているものの、何らかの健康問題によって業務パフォーマンスが低下している状態を指します。
セミナーでは、NTTグループがこのプレゼンティーズムとエンゲージメントの関係を分析し、健康課題が少ない社員ほどエンゲージメントが高いことを示している点が紹介されました。
この考え方を整理すると、以下の三段論法になります。
1.社員の健康状態を改善する
2.その結果、エンゲージメントが高まる
その先に、営業利益の向上があるここで重要なのは、人的資本施策を単発で語るのではなく、施策→人的指標→業績という流れで説明していることです。これが、いま求められる「ストーリー型開示」の典型例といえます。

    どこから改善するかを示すマトリクスの考え方

    さらにNTTグループの事例では、各設問項目の「エンゲージメントとの相関の強さ」と「現状の肯定的回答率」を掛け合わせたマトリクスも紹介されました。
    この整理は実務で非常に使いやすいものです。たとえば、
    相関が高く、肯定的回答率も高い領域 → 重要だが、すでに良好なため維持が中心
    相関が高く、肯定的回答率が低い領域 → 最優先で改善すべき領域
    という形で、打ち手の優先順位を可視化できます。
    セミナーでは、NTTグループでは「キャリア」や「戦略浸透」に関する項目が、改善余地の大きい領域として示されていることが紹介されました。ここから分かるのは、人的資本経営では何となく大事そうな施策ではなく、効果の大きい領域に絞って打つことが重要だということです。


    組織分析をどう活用するか

    相関分析は「関係」を見つけ、重回帰分析は「優先順位」を決める

    人的資本のストーリーを強くするうえで、セミナーで繰り返し強調されたのが「組織分析」です。
    人的資本の実務では、経営陣から「あれもやるべきではないか」「これも必要ではないか」と多くの施策案が出やすいものです。しかし、すべてを同時に進めるのは現実的ではありません。そこで必要になるのが、分析に基づく優先順位づけです。

    相関分析の役割

    相関分析は、ある指標と別の指標がどの程度一緒に動くかを見る方法です。たとえば、
    ・エンゲージメントと営業利益率
    ・プレゼンティーズムとエンゲージメント
    ・心理的安全性と定着率
    などの関係を把握するのに使えます。
    相関分析だけでは因果関係までは断定できませんが、「どこに着目すべきか」を見つける初期分析として有効です。

    重回帰分析の役割

    一方で、より実務に効くのが重回帰分析です。これは、複数の要因の中で、どれが目的変数により強く影響しているかを整理するための手法です。
    セミナーでは、エンゲージメントを目的変数として、
    ・上司の支援
    ・成長機会
    ・企業理念への共感
    などが本当に効いているのかを検証した例が紹介されました。その結果、上司の支援や成長機会は統計的に有意で、優先的に施策を打つ根拠になる一方、企業理念への共感は相対的に優先順位を下げられる可能性がある、という判断につながったといいます。
    これは極めて実務的です。なぜなら、分析があることで、
    ・限られたリソースをどこに集中すべきか
    ・経営陣にどう説明すべきか
    ・現場にどの施策を求めるべきか
    が明確になるからです。

    離職意向の分析も、人的資本経営の重要テーマ

    セミナーでは、離職意向や退職傾向についても、要因を分析した上で施策につなげる動きが増えていると紹介されました。
    離職は、採用コストの増加や現場の生産性低下、ナレッジ流出に直結します。だからこそ、単に「離職率を下げたい」と言うだけでなく、
    ・何が離職意向を高めているのか
    ・どの属性・部署で課題が大きいのか
    ・どの施策が離職抑制に効くのか
    を可視化する必要があります。
    人的資本経営の実務は、感覚論から抜け出し、打ち手の根拠を持つことがますます重要になっています。


    人事戦略がない企業でも進める方法(ボトムアップ型)

    手元のデータから始めて、理論でストーリーを組み立てる

    「企業戦略との接続が重要なのは分かるが、そもそも自社には明確な人事戦略がない」という企業も少なくありません。セミナーでは、そうした企業向けに、ボトムアップ型の進め方が紹介されました。
    その考え方の一つが、学術理論を使ってストーリーの骨格をつくる方法です。具体例として挙げられたのが、「ハイパフォーマンス・ワーク・システム(HPWS)」というモデルでした。
    このモデルでは、業績に対して、退職率や生産性が影響し、さらに退職率には人材ポートフォリオやエンゲージメントが関わるといった構造で整理されます。
    このような理論を使うと、たとえ自社の人事戦略が未整備でも、
    ・業績を高めたい
    ・そのためには定着率や生産性が重要
    ・その改善には、人材ポートフォリオやエンゲージメントが効く
    というストーリーを組み立てやすくなります。

    他社の優良開示事例から共通項を抽出する方法

    もう一つの方法として紹介されたのが、優れた開示事例の共通項を抽出するアプローチです。
    セミナーでは、評価の高い有価証券報告書や統合報告書の事例を複数社分調べた結果、共通して見られるカテゴリーや指標を整理し、それを自社の検討材料にする方法が共有されました。
    この方法の利点は、ゼロから考えなくてよいことです。自社だけで指標設計を始めると迷走しやすいですが、先行企業の共通パターンを参考にすれば、自社の戦略に合う指標候補を見つけやすくなります。
    実務上は、「完璧なオリジナル設計」を目指すよりも、「市場で通用している型」を参考にしながら、自社に合わせて調整するほうが現実的です。


    人事戦略がある企業の進め方(トップダウン型・HRツリー)

    目標から逆算し、KPIと施策をつなぐ

    すでに人事戦略がある企業では、トップダウン型で設計する方法が有効です。セミナーでは、その代表的な手法として「HRツリー」が紹介されました。
    HRツリーの考え方はシンプルです。
    1.理想の組織像や人事戦略の目標を置く
    2.その目標を複数の論点に分解する
    3.各論点ごとにKPIを設定する
    4.KPIを改善するためのアクションを整理する
    5.そのKPIに影響する課題要因を分析する
    この構造にすると、「目標はあるが、日々の施策とつながっていない」という状態を防ぎやすくなります。
    たとえば、エンゲージメント向上を掲げるだけでは抽象的ですが、
    ・何をもってエンゲージメント向上とみなすのか
    ・何が阻害要因なのか
    ・誰がどの施策を持つのか
    まで分解できれば、運用可能な人事戦略になります。

      3カ月単位で進める現実的な設計

      セミナーでは、ボトムアップ型でもトップダウン型でも、最初の3カ月で進め方を整理し、次の3カ月でデータ収集と組織分析を行い、その後に施策実行と効果検証へ進む流れが示されました。
      この点も実務上重要です。人的資本経営は、一度指標を決めて終わるものではありません。むしろ、
      ・設計
      ・分析
      ・施策実行
      ・効果検証
      ・開示反映
      を繰り返す運用が本質です。
      そのため、人的資本経営を定着させるには、プロジェクトではなく、PDCAの仕組みとして設計する必要があります。


      サステナ部門・人事部門・経営層の巻き込み方

      人事部だけでは進みにくい。だからこそ「横断体制」が必要

      パネルディスカッションで繰り返し語られたのは、人的資本を人事部だけに任せるのは現実的ではない、という点でした。
      人事部は、採用、労務、制度運用など日常業務が重く、戦略設計や分析に十分な時間を割けないことが少なくありません。一方、サステナビリティ推進室やIR部門は開示責任を持っていても、人事データの中身まで踏み込みにくい立場です。
      そのため、うまく進んでいる企業では、
      ・人事
      ・サステナビリティ推進
      ・経営企画
      ・広報
      ・情報システム
      ・必要に応じて社外有識者
      といった関係者が、部門横断で関わる体制を作っているといいます。
      セミナーでは、「人的資本委員会」のような会議体を設け、定期的に議論と役割分担を行う事例が紹介されました。これにより、特定部門に負担が偏らず、開示と施策を一体で進めやすくなります。

      巻き込みの起点は、サステナ部門が持ちやすい

      特に示唆的だったのは、サステナビリティ推進室が問題意識を持ち、役員や他部門に働きかけて会議体づくりを進めるケースです。
      サステナ部門は、統合報告書や法定開示との接点を持つため、外部要請を起点に議論を立ち上げやすい立場にあります。実際、金融庁のパブリックコメントのような制度動向は、社内を動かす材料として有効だと語られました。
      つまり、サステナ部門は「人事の代わりをする」必要はありませんが、「会社としてこのテーマに着手しなければならない」という論点整理役として、非常に重要な役割を果たせます。


      現場で起こりやすい壁と、その乗り越え方

      壁1:上層部が必要性を理解しない

      現場では、人的資本の課題を感じていても、経営層が「うちの業界ではこんなものだ」と受け止め、問題として扱わないケースがあると共有されました。
      こうした場合に有効なのは、内部の訴えだけで押し切ろうとしないことです。セミナーでは、以下のような外部視点が有効だとされました。
      ・他社の開示状況を示す
      ・先行企業の事例を持ち込む
      ・外部専門家や社外取締役の意見を活用する
      ・深刻な退職や定着課題を具体的に示す
      要するに、社内の感覚論ではなく、「外から見ても対応すべき論点」であることを示すことが、突破口になりやすいのです。

      壁2:人事とサステナの間に壁がある

      人的資本は、人事データを扱う一方で、開示責任はサステナやIRが担うことも多く、部門間の壁が生まれやすい領域です。
      セミナーでは、こうした壁を越えるには、「ハブ」が必要だと整理されました。このハブは、
      ・役員などのキーパーソン
      ・委員会や定例会議のような会議体
      ・社外取締役や外部有識者
      など、人であっても場であっても構いません。
      大切なのは、「あの部門の仕事」と線を引くのではなく、全体をつなぐ接点を意図的につくることです。ハブがないままでは、部門間で責任の押しつけ合いが起きやすくなります。

      壁3:データが多すぎる、または扱いにくい

      パネルでは、人的資本関連データの多さも大きな課題として語られました。法定開示で必要な項目と、外部アンケートや評価機関対応で求められる項目にはギャップがあり、場合によっては膨大なデータポイントの管理が必要になります。
      ここでの示唆は明快です。いきなりすべてを取りにいかないことです。
      うまく進んでいる企業は、
      ・まず優先順位の高い指標から始める
      ・最小限のデータで分析して成功事例をつくる
      ・信頼関係を築きながら、徐々に対象データを広げる
      というステップを踏んでいます。
      これは、単なる効率の問題ではなく、部門間の信頼構築にもつながります。最初から大量のデータ提出を求めると、人事部の抵抗は強まりやすいからです。

      壁4:個人情報・機微情報の扱いが難しい

      人事データには、給与や評価など、非常にセンシティブな情報が含まれます。このため、部門横断での分析や、外部専門家との連携に慎重になるのは当然です。
      この点について、パネルでは以下のような実務的な考え方が示されました。
      ・分析に必要な最低限のフォーマットを定義する
      ・個人を特定できる情報はできるだけ除外する
      ・共有しづらい項目は、人事部側で集計・加工した後のデータだけを渡す
      ・テンプレート化して、毎回のやり取りを標準化する
      つまり、「全部見せるか、全く見せないか」の二択ではなく、分析に必要な粒度だけを安全に渡す設計が重要です。


      これから企業が取るべきアクション

      まずは「何を開示するか」ではなく「何を改善したいか」を定める

      人的資本経営は、以前より落ち着いたテーマに見えるかもしれません。しかしセミナーでは、これは関心の低下ではなく、フェーズの移行だと整理されました。
      最初のフェーズは、「まず開示すること」でした。
      今のフェーズは、「開示した以上、どう改善するか」です。
      この変化を踏まえると、企業が取るべきアクションは明確です。

      1. 企業戦略とつながる人的課題を絞る

      エンゲージメント、離職率、採用、女性活躍、健康など、人的資本のテーマは多岐にわたります。まずは、自社の経営戦略に照らして優先順位をつけるべきです。

      2. 重要指標の背景と改善仮説を言語化する

      「この指標が重要な理由」と「どう改善するか」を言語化するだけでも、開示の質は大きく変わります。

      3. 最小限のデータで、分析と小さな成功体験をつくる

      最初から完璧を目指す必要はありません。分析できる範囲から始め、成果を示しながら社内の信頼を獲得することが、結果的に前進を早めます。

      4. 横断的に議論する場を設計する

      人的資本は、人事だけでもサステナだけでも完結しません。委員会や定例会議など、PDCAを回せる場づくりが不可欠です。

      5. 開示を提出物ではなく経営改善の仕組みに変える

      最終的に重要なのは、開示資料を整えることではなく、そこに記載された内容が本当に改善されることです。人的資本経営は、IRやサステナ対応のためだけでなく、組織そのものを強くする営みとして捉えるべきでしょう。


      4. まとめ

      ・人的資本開示は、指標の羅列ではなく、「なぜその指標を重視するのか」「どう改善するのか」を示す時代に入っています。
      ・金融庁の動向を踏まえ、人的資本は企業戦略と関連づけて説明することがより重要になっています。
      ・先行企業では、エンゲージメントを業績や健康指標と結びつけ、施策→人的指標→業績のストーリーで開示する動きが進んでいます。
      ・相関分析や重回帰分析は、人的資本施策の優先順位づけと社内説明の根拠づくりに有効です。
      ・人事戦略が未整備でも、学術理論や他社事例を活用すれば、ボトムアップでストーリーを組み立てることは可能です。
      ・人的資本経営は、人事部だけで完結しません。サステナ、経営企画、広報、情報システムなどを含めた横断体制が重要です。
      ・成功の鍵は、最初から大きく広げすぎず、優先順位の高いテーマから小さく始めて、成功事例を積み上げることです。

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