2025年10月17日は、サステナビリティ分野で国際的に注目すべき動きが複数報じられました。特に、パリ協定発効から10年を迎えた現状評価に関する学術論文の発表や、国際海運分野での脱炭素化政策の遅延、そして人権とエネルギー転換の関係に関する国連の声明など、グローバルな視点で今後のESG戦略に大きな示唆を与える内容が目立ちました。本コラムでは、昨日発表された主要な記事・論文を要約し、サステナビリティの最新動向を解説します。
昨日のサステナビリティ最新トピック
パリ協定は機能しているが、経済成長の影響を相殺できていない
ワシントン大学主導の研究チームが、パリ協定発効から10年のデータを用いた統計分析を発表しました。本論文によれば、パリ協定は一部の国で温室効果ガス排出削減に寄与したものの、世界的な経済成長による排出増加を相殺するには至っていません。特に中国やインド、ロシアでは経済成長に伴い排出量が大幅に増加。中国はカーボンインテンシティ(GDPあたりの排出量)を36%削減したものの、GDPの急成長で総排出量は増加しています。
一方で、最も壊滅的な気候変動(気温上昇3度以上)の確率は2015年の26%から9%に低下し、2度未満に抑えられる確率も5%から17%に上昇するなど、前向きな傾向も見られます。今後は、特に経済規模の大きい国がより強力な排出削減策を講じる必要があると指摘されています。
国際海運の脱炭素化政策、IMOが枠組み採択を延期
国際海事機関(IMO)は、商業船舶の温室効果ガス排出削減に向けた「ネットゼロ枠組み」および燃料基準の採択を延期する決定を下しました。これにより、グローバルな海運業界の脱炭素化がさらに遅れることとなり、環境団体や港湾関係者からは強い懸念の声が上がっています。シアトル港の声明では、「環境と経済はこれ以上の遅延に耐えられない」とし、地域レベルでの自主的な取り組み強化を表明しています。
国連専門家「人権は公正かつ持続可能なエネルギー転換の鍵」
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、エネルギー転換の過程で人権を中心に据えることが、公正かつ持続可能な社会の実現に不可欠であるとする声明を発表しました。特に、再生可能エネルギー導入や脱炭素化の推進において、労働者や地域住民の権利保護が重要であると強調しています。
まとめ
2025年10月17日は、サステナビリティ分野で複数の重要な動きがありました。特筆すべきは、パリ協定10年目の評価に関する学術論文の発表です。経済成長の影響を相殺するには現状の取り組みでは不十分であり、特に大国の一層の努力が求められています。また、国際海運分野での脱炭素化政策の遅延や、米国の気候政策後退への懸念も浮き彫りとなりました。さらに、エネルギー転換における人権の重要性が国連から改めて強調されるなど、サステナビリティの実現には多角的な視点と国際協調が不可欠であることが示されています。
今後も、経済成長と環境保護の両立、国際的な政策協調、そして人権尊重を軸としたサステナビリティ戦略の深化が求められます。

