2025年11月8日は、COP30(国連気候変動枠組条約締約国会議)を目前に控え、世界各国がサステナビリティ推進に向けた新たな取り組みを発表した日となりました。特に、サステナブル燃料の利用拡大に向けた国際共同宣言や、企業主導によるバリューチェーン全体の脱炭素化を加速する新たなプラットフォームの始動が注目されます。本コラムでは、昨日発表された主要なサステナビリティ関連ニュースや論文を要約し、最新動向を解説します。
昨日のサステナビリティ最新トピック
サステナブル燃料利用の4倍拡大を目指す国際共同宣言
日本、ブラジル、イタリアを中心とする19カ国が、2035年までにサステナブル燃料(バイオ燃料や低炭素水素など)の利用を4倍に拡大することを目指す共同宣言を発表しました。これはCOP30に先立つ形で発表され、航空、海運、自動車など多様な産業での導入が想定されています。先進国・新興国を問わず幅広い国が参加しており、グローバルなサステナブル燃料市場の拡大が期待されます。
WBCSD、バリューチェーン脱炭素化を加速する「ERA」プラットフォームを発表
世界持続可能発展ビジネス協議会(WBCSD)は、企業主導でバリューチェーン全体の脱炭素化を推進する新プラットフォーム「Emissions Reduction Accelerator(ERA)」を正式に発表しました。ERAは、農業分野のグリーン肥料や、建築分野のネットゼロ資産化など、インパクトの大きい2つのバリューチェーンでパイロットプロジェクトを開始します。WBCSDとEYの共同分析によれば、会員企業のバリューチェーンは世界の温室効果ガス排出量の約4分の1を占めており、Scope3排出削減が急務です。ERAはコスト削減やレジリエンス強化、新市場開拓など、ビジネス上のメリットも強調しています。
カナダ、気候競争力戦略に関する新たな発表を予告
カナダ環境・気候変動大臣とエネルギー・天然資源大臣は、2025年度予算に基づく「気候競争力戦略」の詳細を発表することを予告しました。発表内容は、環境保全と経済成長の両立を目指すもので、今後のカナダのサステナビリティ政策の方向性を示すものとなります。
COP30直前、アマゾンの熱帯林保全と「実装の年」への期待
COP30がブラジル・ベレンで開催されるのを前に、世界中のリーダーや専門家が集結しています。今年のCOPは「実装の年」と位置付けられ、各国が気候変動対策の国家計画を持ち寄ることが求められています。特に、ブラジル政府が主導する「Tropical Forests Forever Facility(熱帯林永続ファシリティ)」など、森林保全に対する新たな資金メカニズムが注目されています。一方で、抜本的な新合意は期待されておらず、既存の枠組みの実効性向上が焦点となっています。
米デルタ航空とシアトル・タコマ空港、サステナブル燃料利用拡大へ
米デルタ航空とシアトル・タコマ国際空港は、サステナブル燃料の利用拡大に向けた取り組みを強化しています。デルタ航空は一部政策への批判も表明しつつ、気候変動対策へのコミットメントを維持しているとしています。航空業界におけるサステナブル燃料の導入は、今後の脱炭素化の鍵を握る分野です。
まとめ
2025年11月8日は、COP30を目前に控え、サステナビリティ分野で国際的な協調と企業主導の実装加速が鮮明になった一日でした。特に、サステナブル燃料の利用拡大に向けた19カ国の共同宣言と、WBCSDによるバリューチェーン脱炭素化プラットフォーム「ERA」の始動は、今後のグローバルな脱炭素化の流れを象徴する動きです。また、カナダの気候競争力戦略や、COP30での森林保全資金メカニズムの議論も、サステナビリティ推進の多様なアプローチを示しています。
昨日の動向からは、「実装」や「バリューチェーン全体での協調」が今後のサステナビリティ戦略のキーワードとなることが読み取れます。企業や自治体は、国際的な潮流を踏まえた上で、自社のバリューチェーン全体を見据えた脱炭素化や、サステナブル燃料の導入拡大に積極的に取り組むことが求められます。

