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企業の包括的なサステナビリティ戦略と金融革新が加速

2025年5月27日、サステナビリティの分野では複数の重要な進展がありました。キンロス・ゴールド社が包括的なサステナビリティレポートを発表し、40億ドルの社会的便益を創出したことを報告。一方、Snam社は史上初となるスコープ1、2、3すべての排出量をカバーするネットゼロ目標を含む20億ドルのサステナビリティ・リンク・ボンドを発行しました。また、MITエネルギーイニシアチブでは、NRDCのマニシュ・バプナCEOが州レベルでの気候変動対策の重要性を強調しています。これらの動きは、企業のサステナビリティへの取り組みが一層深化し、金融市場との統合が進んでいることを示しています。

目次

昨日のサステナビリティ最新トピック

1. キンロス・ゴールド社、2024年サステナビリティレポートで40億ドルの社会的便益を報告

キンロス・ゴールド・コーポレーション(トロント証券取引所:K、ニューヨーク証券取引所:KGC)は2025年5月27日、2024年サステナビリティレポートを発表しました。このレポートは同社のサステナビリティ戦略の進捗状況を包括的に要約したもので、今回で17年目の発行となります。

レポートによると、キンロス社は税金、賃金、調達、コミュニティ投資を通じて総額40億ドルの便益を創出したことが明らかになりました。J・ポール・ロリンソンCEOは「キンロスのサステナビリティへのコミットメントは当社の価値観と文化に深く根ざしており、責任ある採掘への取り組みを堅持しています」と述べています。

同社のサステナビリティ戦略は、「労働力とコミュニティ」「自然資本」「気候とエネルギー」の3つの柱に基づいており、過去3年間にわたって従業員と協力して開発された新しいグローバル安全衛生アプローチ「Safeground」にも言及しています。このレポートは、サステナビリティが企業の全体的な業績と株主価値の向上にどのように貢献しているかを強調しています。

(出典:https://www.kinross.com/English/news-and-investors/news-releases/press-release-details/2025/Kinross-releases-2024-Sustainability-Report/default.aspx

2. Snam社、全排出スコープをカバーするネットゼロ目標を含む20億ドルのサステナビリティ・リンク・ボンドを発行

イタリアのエネルギーインフラ企業Snam社は2025年5月27日、20億ドル規模の複数トランシェからなる米ドル建てサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)の発行に成功しました。このボンドは持続可能な金融の歴史的な一歩を記すもので、スコープ1、2、3のすべての温室効果ガス排出量にわたるネットゼロ目標を含む世界初のSLBとなりました。

Rule 144A/Reg S形式で実行されたこの取引は、2025年に欧州の投資適格規制発行体による同種の取引としては最大規模となり、総額100億ドルの注文を集めました。提供額の5倍の応募があったことは、高い完全性を持つESGコミットメントに対する投資家の強い関心を示しています。

Snam社のアゴスティーノ・スコルナイェンキCEOは「米ドル建て債券の初発行は、資金調達源の多様化、持続可能な金融への道の加速、国際的な投資家基盤の拡大という当社の戦略における重要な節目を表しています」と述べています。

(出典: https://esgnews.com/snam-raises-2b-in-landmark-usd-sustainability-linked-bond-with-net-zero-target-across-all-emissions-scopes/

3. マニシュ・バプナNRDC会長、MITエネルギーイニシアチブで州レベルの気候変動対策の重要性を強調

2025年5月27日、米国最大の環境団体の一つである天然資源防衛協議会(NRDC)の会長兼CEOであるマニシュ・バプナ氏は、MITエネルギーイニシアチブの2025年アースデイ・コロキウムで講演し、気候変動対策を国家の優先事項として復活させることを提唱しました。

バプナ氏はMITで電気工学の学士号を取得し、ハーバード大学でビジネスおよび政治・経済開発の修士号を取得しています。NRDCでの役割に就く前は、世界銀行、銀行情報センター、世界資源研究所でリーダーシップの役割を担っていました。

講演の中でバプナ氏は、連邦政策が現在大きな転換期にある一方で、近年の環境・クリーンエネルギーの取り組みの多くが州レベルに焦点を当てていることを指摘しました。彼は「カリフォルニア、ニューヨーク、マサチューセッツといった予想される州だけでなく、中西部や南東部の州でも興味深い動きが見られます。これらの州はしばしばクリーンエネルギー投資の最大の受益者であり、利害関係を持っています」と述べています。

また、多くの企業が依然として信頼性が高く手頃な価格のエネルギーを求めており、太陽光発電や蓄電池などのクリーンエネルギーが天然ガスよりも迅速に構築できることを認識していると指摘しました。特にデータセンターやAIセンターに投資するハイパースケーラーにとっては、エネルギーコストが投資全体のわずかな部分であるため、価格にそれほど敏感ではなく、信頼できるクリーンエネルギーの迅速な構築が重要であると強調しています。

(出典: https://energy.mit.edu/news/3-questions-manish-bapna-on-prioritizing-sustainability-and-climate-action/

まとめ

2025年5月27日のサステナビリティ関連の発表は、企業のサステナビリティへの取り組みが一層深化し、金融市場との統合が進んでいることを示しています。

キンロス・ゴールド社の2024年サステナビリティレポートは、鉱業セクターにおける責任ある事業運営の重要性と、それが社会的便益の創出にどのように貢献しているかを明確に示しています。40億ドルという便益の規模は、サステナビリティ戦略が単なる環境保護にとどまらず、経済的・社会的価値の創出にも直結していることを証明しています。

一方、Snam社のサステナビリティ・リンク・ボンドは、サステナブルファイナンスの新たな地平を開くものです。スコープ1、2、3すべての排出量をカバーするネットゼロ目標を含むSLBの発行は、企業の気候変動対策が包括的かつ野心的になっていることを示しています。また、このボンドが5倍の応募を集めたことは、ESG投資への市場の強い関心を反映しています。

NRDCのマニシュ・バプナ氏の講演は、気候変動対策が連邦レベルで後退する中でも、州レベルや企業レベルでの取り組みが進展していることを示しています。特に、クリーンエネルギーが経済的にも競争力を持ち始めていることは、サステナビリティと経済成長の両立が現実的になっていることを示唆しています。

これらの動向は、サステナビリティが企業戦略の中核に位置づけられ、投資判断の重要な要素となっていることを示しています。また、サステナビリティへの取り組みが単なるコスト要因ではなく、競争優位性や長期的な価値創造の源泉として認識されるようになっていることも明らかです。

今後も、企業のサステナビリティ戦略はより包括的かつ野心的になり、それを支える金融商品も多様化・高度化していくことが予想されます。また、政策環境の変化に関わらず、市場主導のサステナビリティへの移行が加速していくことも期待されます。

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